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増澤信一郎の心模様

2016年03月07日

終わった人

1

























内館牧子さんの同名の小説より。

◎定年って生前葬だな。

 俺は専務取締役室で、机の置時計を見ながらそう思った。あと二十分で終業のチャイムが鳴る。それと同時に、おれの四十年にわたるサラリーマン生活が終わる。六十三歳、定年だ。
 明日からどうするのだろう。何をして一日をつぶす、いや、過ごすのだろう。

 「 定年後は思いきり好きなことができる 」だの、「 定年が楽しみ。第二のスタート 」だのと、きいた風な口を叩(たた)く輩(やから)は少なくない。だが、負け惜しみとしか思えない。それが自分を鼓舞する痛い言葉にしか聞こえないことに、ヤツらは気づきもしないのだ。

 六十三歳、まだ頭も体も元気だ。幾らでも使えるし、このまま専務として残っても、他のヤツらよりずっと働ける。

会社の外には、すでにハイヤーが俺を待っているだろう。定年の最後の日だけ、地位に関係なく男子社員も女子社員も、黒塗りのハイヤーで自宅に送ってもらえる。
 そしてそろそろ、花束やテープ、クラッカーを手にした社員たちが、玄関ロビーに並び始めているかもしれない。

 元気でしっかりしているうちに、人生が終わった人間として華やかに送られ、別れを告げる。 生前葬だ。

 これからどうする? 「 まだ俺は成仏していない。どんな仕事でもいいから働きたい 」 と職探しをするが、取り立てて特技もない定年後の男に職などそうない。

 生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?



◎卒婚。

 「 私、離婚しないわよ 」 「 え? 」
「 離婚のプラス面を数えあげても、どうしても踏ん切りがつかない 」
「 九千万で苦しめられてもか? 」
「 許してはいない 」
「 離婚しないで故郷(ふるさと)に帰れってことは、別居か 」
「 卒婚(そつこん) 」
「 卒婚?何だ、それ 」
「 店のお客さんに聞いたの。最近、すごく多いって。そのお客さんも卒婚したんだけど、結婚を卒業すること 」
「 離婚と同じだろう 」
「 じゃないの。離婚は不仲の夫婦が籍を抜く方法よ。でも、卒婚は籍を抜かずに、お互いに自分の人生を生きるために、同居の形を解消するの 」
「 ・・・俺たちは不仲じゃないとおもっていいのか 」

妻は表情を変えず言い切った。

「 不仲よ。私も許していないし、あなたも私にうんざりしてる。でも、お互い、離婚には行きつけないでいる 」

その通りだが、ずいぶんと都合のいい形態だ。 「 卒婚 」 などという女性受けしそうな造語も不快だ・・・・・・・。
 
●『 生前葬 』、 『 卒婚 』 この本なかなか面白かった!


●私(増澤)当年とって69歳。思いますに、吾がこととして思えば “ 終わってはいない ” が、 “ 終わったような人 ” でもある。身につまされる言葉でもある。定年、余生・・・・何か始めなければと思いつつ、先ずは健康。

先日大手の会社社長を正式に引退した海外勤務の多かった友達Mの話。Mの友人(私の友人でもある)のI、大学卒業後A航空会社に勤めて、フランス人の奥さんがいるが、彼もまた先日リタイアした。その時奥さんに 「 貴方、毎日テレビの前で坐っているような生活はしないでね! 」 と言われたという。

Mもまた同じような思いだろう。 そしてM、「 俺は東海道を全行程歩いてみたい。・・・ある地点まで歩いたら、電車で自宅まで帰り、次の日またその地点まで電車で行き、そこから次の地点まで又歩く。それを繰り返す。 」 というのだ。それもいいだろう。

私はというと、年に二回の海外旅行と、ハワイへの二ヶ月ほどのロングステイ。日本にいる間は毎日のウォーキングと畑仕事とゴルフ、読書、をしたいと思っている。

●内館さんも我々と同じ団塊の世代である。私(増澤)、終わった人ではなく、始める人でありたい。

●仲の良い二人の友達がいる。二人とも老人病(一般的には高血圧、癌、脳梗塞、脳溢血、関節痛、記憶障害、等を言うらしい)で苦しんでいる。

そして、かく言う私高血圧の治療を7〜8年前から受けているのだが、近頃ひざが痛み始めて気になっている。今まで一度たりともそんなことはなかったのに。 モヤモヤした頭で先日、信号待ちの車に軽く追突し前の車の運転手を軽いむち打ち症にしてしまった。 いかんいかん! 感覚も鈍ってきているらしい。

家族にあっては、寝たきりの母の介護を家内に任せきりにしているので、当分は遠出もできないが、これから続くであろう老後に向けて老人病対策もしながら身を律する必要があると思う今日この頃である。


Posted by masuzawa05 at 06:00│Comments(0)
 
心を形に表す
建築空間にはいろいろの「想い」がある。
具体的な平面から容積のある空間へと立ち上げるさまざまな作業の中で、オーナーの使い勝手や心情が、私の心を通して色づいていく。
思い入れ豊かに熟成された建築空間には、オリジナルでしなやかな空気が息づき始める。
豊潤で美しく、時に凛々しい。
機能的であることは大切なことですが、美的な創意工夫も大切な要素です。
そう思いながら設計しています。


増澤信一郎
S22年10月11日生まれ
芝浦工業大学建築工学科卒業
静岡県伊東市宇佐美在住
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