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増澤信一郎の心模様

2016年02月15日

JIA研修旅行・2015

「世界遺産・富岡製糸場と上州の名建築をめぐる」建築ウォッチングの旅

去年に続いて今年も、JIA・建築ウォッチングのツアーに参加することにした。今年は伊豆韮山の反射炉を含め「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産登録を受け、賑わい始めているのを見聞きし、それでは先輩格の富岡製糸場もどの様なものか一度見てみたい気持ちに駆られてのことである。
富岡製糸場と桐生のまちなみを見学し、硫黄泉の濁り湯で有名な草津温泉に一泊して、正しく「草津よいとこ一度はおいでドッコイショ・・・」で温泉を堪能し、翌日は吉村さんの「天一美術館」、ヨコミゾマコトさんの富弘美術館、A・レーモンドさんの群馬音楽センターと旧井上邸を見学するという盛りだくさんな企画に魅力を感じたからである。

富岡製糸場:
 皆さんご存知のように富岡製糸場は明治5年(1832年)明治政府が日本の近代化のために最初に設置した模範器械製糸場である。建造物群が現存する施設の操糸場は長さ140.4メートル、幅12.3メートル、高さ12.1メートルで、当時、世界的にみても最大規模でした。
 又、韮山の反射炉は現存する唯一の幕末期の大砲を鋳造する為の炉で、それ故に複合遺産として登録されたとのことです。殖産興業、富国強兵、国策に沿った遺構であることは分かりますが、それがどうしたんだと言う声が聞こえてくるようです。
確かに古いものが大切に保存され、時代の息吹に触れられる貴重な遺産を見聞できるのですが、文化遺産や、風景・自然遺産のように感動を伴なう環境や興味をそそられるものが保存されているわけでもなく、建物自体も特別な工夫が凝らされているわけでもない。
せめて建物の一画、機械が実際に稼動していてライブで操業を体感できるのであれば、それはそれとして生活感が有って素晴らしいのではないでしょうか。保存の仕方、ありようがもっと工夫されていいのではと思いました。
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桐生の篤志家の方が自宅の蔵を改装し、織物の展示空間を開設していました。金糸銀糸で織り込まれた輸出用のドレス生地は絢爛豪華、素晴らしく、日本人の技術力・美意識にしばしうっとりとしてしまいました。
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天一美術館:
 吉村順三さん設計の天麩羅の老舗「銀座 天一」のコレクションを収蔵展示している。私、「天麩羅屋は儲かるんだなー」なんて下世話な思いで見学するも、「料理こそ総合芸術であり人間の五感に感応して大きな喜びを与えるのである」。という創業者の際立った感性と人柄が武者小路実篤、志賀直哉など多くの文化人に親しまれ時のサロンとしての役割を果たした。バーナード・リーチ氏の来日時には必ず天一で宴が開かれ、芸術界最高峰の方々の尽きない語らいがあったという。むべなるかな、息子さんの代に吉村さんと言う人を得て、谷川岳の麓の温泉郷に瀟洒な展示空間ができた。これが吉村さんの最後の作品であるそうだ。
 駐車場際・通路の可憐な山野草の小庭を経て、エントランスに続く階段アプローチもさりげなく、昇り道も苦にならない。外観・内部共、奇をてらうこともなく粛々として、周囲自然との一体感も素直で嫌味がない。インテリアはシンプルでかつ空間のプロポーションが良く凛として美しい。置かれた家具も人に優しいのがいい。
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 富弘美術館は国際コンペで、伊東豊雄さんの処にいたヨコミゾマコトさんが一等になったもので、シャボン玉から発想を得て、平面的な丸い自立壁が屋根を支え空間を成し、それら部屋が連なる斬新なデザインであるが、師匠伊東さんを超えただろうか・・・。アイデアを昇華させ、芸術作品として展示物共々時代の感性に耐え、味わいを増し、生き残ることのできるしたたかなデザインと言う点からは、甘いように思うのだが、いかがなものか。

富弘さんは絵達者、ことばの魔術師。正統派の仕事は俗で固まった私にはこそばゆく、眩し過ぎる。

 群馬音楽センター:
 A・レーモンドの設計。骨太なある時代を築いた建築家の力量が、分かりやすい空間として呈示されていて、内部階段の意匠に見る職人気質な世界は、古くて新しい。なぜか懐かしく微笑ましくほっとさせられる。
私、四十数年前、設計の仕事を始めたとき、先代の石井信吉より 「構造が即ち意匠として表れ、美しい」 そんな素直な建築を目指しなさい。と言われたことを思い出していました。かつてシドニーのオペラハウスを見学した時、インテリアは外観に関係ないフラットな天井が張られていて、がっかりした事を思い出してもいました。その点、この建物は外部に表れる構造がインテリアにも表出されていて美しい。
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 旧井上邸:
 A・レーモンドの設計。かつて、日本の総理大臣を務めた一級建築士の田中角栄さんが勤めていたという、地方の大手建設会社のオーナーであり、篤志家の自邸である。こういう地方の名士が、伝統と建築文化の継承に果たした役割を思わざるを得ない。
去年も軽井沢でいくつかの作品を見学したが、この家、木造丸太作りの軽井沢の教会を髣髴させるものがある。私思いますに、多分レーモンドさんは来日して、木造大工さんの手仕事・力量とそれを支える日本人の感性に惚れ込んでしまった・・・のではないか。
手仕事と和空間からの逃れられない想いが、国籍を越え軽妙洒脱な木のあしらいに遊び、和魂洋才の世界を追い求めていったのであろう。
庇を介し天空に続く軒先空間に神が宿り、内と外のつながりの中、天地・自然と一体になることを模索し、そこに和の真髄を感じたのであろうか。生きていれば聞いてみたいものだ。
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和食が世界文化遺産となり、世界の目が日本に向いている今、次なる文化遺産は何かと問われれば、迷うことなく、 “ 和 ” の真髄である自然との融合を目指す木造「数奇屋建築」であると答えたい。 いかがでしょうか。


Posted by masuzawa05 at 06:00│Comments(1)
この記事へのコメント
世界遺産となった和食はその中心には「ごはん」があると思います。「すきやけんちく」は「ごはん」たりえるのでしょうか?
Posted by 通行人 at 2016年02月15日 12:55
 
心を形に表す
建築空間にはいろいろの「想い」がある。
具体的な平面から容積のある空間へと立ち上げるさまざまな作業の中で、オーナーの使い勝手や心情が、私の心を通して色づいていく。
思い入れ豊かに熟成された建築空間には、オリジナルでしなやかな空気が息づき始める。
豊潤で美しく、時に凛々しい。
機能的であることは大切なことですが、美的な創意工夫も大切な要素です。
そう思いながら設計しています。


増澤信一郎
S22年10月11日生まれ
芝浦工業大学建築工学科卒業
静岡県伊東市宇佐美在住
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