livedoor Blog
このBlogをチェッカーズに追加 このBlogを
チェッカーズに追加
このBlogをリーダーに追加 このBlogを
リーダーに追加
増澤信一郎の心模様

2014年01月20日

建築賞・その2 緑縁の栖 (りょくえんのす)

 他人の作品をあまり見ない私にとって、作品としての住宅を見学することは新鮮で勉強になる。今回も審査員としての現地視察の後、前回に倣っての感想文です。

講評としては:
 遠景のない敷地、三方に住宅が迫り、前面道路の向かいも外壁のみが見える。小高い丘の分譲地の一角にこの白いボックスの栖がある。

 四角い陸屋根の箱が地面より80センチほど浮いて見える。四周のカベの内側に緑縁を巡らし、緑縁は居室により外部となり又内部の一部として取り込んでいる。設計者が現代の縁側と呼ぶこのスペースは内部空間に対し採光・通風・緑陰の仕掛けを演出している。

1




2





 構造は鉄骨造で外周の内側に主構造を組み、4週は1.2M程キャンチレバーで処理し、ハネ出しの先端に、下部を80センチ程カットした下がりカベが付いているという、単純明快なプラン・セクションである。

 こういう敷地の場合、中庭もつコートハウスか、L字か、前面道路側に庭を作るかして、部分的に許される範囲内で大きな窓をつくるのが一般的であるが、4周を囲いながらも緑縁の屋根なし吹き抜け・外周下地窓・側面から充分な光が溢れ明るい。

外部緑縁を含めると床面積22坪+緑縁8坪=30坪の、広々とした空間に見えるから不思議だ。遠望のない住宅は鬱陶しいのではないかとの、私の心配は杞憂に終わった。

3






 ガラスや、内部化した外部と同仕様のゴロタ石の掃除は大変だがマメに掃除をしているという。設えそれ故に、メンテナンスを怠らないという強い心意気が感じられた。
夏は暑く、冬も寒いが、夏は下地窓の通風やエアコンでしのぎ、冬はストーブを置いて過ごしているという。オーナーもそのことは重々承知をしていて、それにも勝る空間の豊かさを享受しているという。

 外部は閉じて内なるプライバシーを確保しながらも、適度にコントロールされた日の光と、緑陰のゆらぎが内外部一体となった白いカベに映え、さわやかな風が流れる。全体としてはワンボックスな拡がりのある、秀逸でスタイリッシュな空間となっていて素晴らしい。

4




5




○ 居間

6






○ 寝室兼書斎

7




8




9








○ 水廻り

10




11








12








● 近所の子供が下地窓から覗きに来ることがあり、付いてきた母親がダメダメと諭して連れ帰るという、微笑ましい話を奥様から聞きました。

さて、結果ですが、審査員の中に約一名 「 他でも見たことがある 」 という意見が出ましたが、似ていても良ければいいじゃないかというのが私(増澤)のスタンスで、全員で推薦、目出度く入賞です。



Posted by masuzawa05 at 10:46│Comments(0)
 
心を形に表す
建築空間にはいろいろの「想い」がある。
具体的な平面から容積のある空間へと立ち上げるさまざまな作業の中で、オーナーの使い勝手や心情が、私の心を通して色づいていく。
思い入れ豊かに熟成された建築空間には、オリジナルでしなやかな空気が息づき始める。
豊潤で美しく、時に凛々しい。
機能的であることは大切なことですが、美的な創意工夫も大切な要素です。
そう思いながら設計しています。


増澤信一郎
S22年10月11日生まれ
芝浦工業大学建築工学科卒業
静岡県伊東市宇佐美在住
MONTHLY ARCHIVES
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: