2012年02月06日
英詩訳・百人一首
“ いにしえの感性、香り立つやまとごころ ”
「 One Hundred Poems, One Poem Each. 」
● ドナルド・キーン博士が絶賛する、ピーター・マクミランの 「 小倉百人一首 」 を書評で知った。なにやらの興味と、歌留多でうろ覚えの三十一文字の読解に挑戦しようと思った。
『 君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ 』 光孝天皇
For you,
I went out to the fields
to pick the first spring greens
all the while on my sleeves
a light snow falling.
「 これは、今までのところ、もっとも卓越した名訳である 」− ドナルド・キーン
● 私(増澤)、理系の頭では、上記の歌ぐらいの解釈がせいぜいで、古典(文語体)の読みくだしが出来ないもどかしさ・・・。もっとも、英語力が堪能で感性豊かであれば、そちらから理解し問題が無いのだが、英語の方はもっとあやしい情けなさ。
恥を忍んで女房に解説文(漫画イラスト入り)の本を借り六十路の貧脳の虎の巻とした。
そこで、日本語の解説文、英訳本を別々に読んで、なるほどと納得・感動が重複したものを自分勝手に取り上げることにしてみた。
◎ 四: 山辺赤人
『 田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ 』
Sailing out on the white crests ( crest:波頭 )
of the Bay of Tago, I look up
There before me
even more dazzling− ( dazzling:目もくらむほどの )
snow still falling ( still:静かに )
on Fuji crowned in white
○ 田子の浦に出でてはるか彼方を眺めて見ると、真白な富士山の高い嶺に雪が降り続いていることよ。
◎ 九: 小野小町
『 花の色は 移りにけりな いたづらに わが見世にふる ながめせし間に 』
A life in vain. ( vain: むなしい )
My looks, talents faded ( talent: 才能、fade:褪せること )
like these cherry blossoms
paling in the endless rains ( paling:<色が>薄くなる )
that I gaze out upon, alone. ( gaze:何かをじっと見つめる )
○ 美しい桜の花の色はすっかり褪せてしまったよ、むなしく春の長雨が降っている間に、私の器量もすっかり衰えてしまった。むなしくこの世を過ごし、物思いにふけっている間に。
◎ 四十: 平兼盛
『 忍ぶれど 色に出でにけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで 』
Though I try to keep it secret,
my deep love
shows in the blush on my face. ( blush:赤面する )
Others keep asking me
-----Who are you thinking of ?
○ 人に知られまいと心に秘めてきたが、私の恋心はとうとう顔色に出てしまったよ。「 なにか物思いをしているの 」 と人が尋ねるほどに。
◎ 六十一: 伊勢大輔 ( いせの・たいふ )
『 いにしえの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな 』
The eightfold cherry blossoms ( eightfold:八重の )
from Nara’s ancient capital
bloom afresh today
in the new palace of Kyoto
with its nine splendid gates ! ( splendid:華麗な )
○ その昔、華やかに栄えていた奈良の都で咲いた八重桜が、今日はこの九重の宮中で、色美しく咲ほこっている。
◎ 百: 順徳院
『 ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり 』
Memory ferns sprout in the eaves
of the old forsaken palace.
But however much I long for them,
they never will come back−
the days of old.
( memory:~を回想してしまう、ferns sprout: シダの芽、eaves:軒、forsaken:見捨てられた
Palace:宮殿、but however much:どんなに、long:思いこがれようとも )
○ 宮中の古く荒れ果てた軒の端に生えている忍び草を見るにつけても、いくら偲んでも偲びつくせないほど、恋しく懐かしい昔の御世であろうか。
( ももしき: 宮中の意、枕詞 「 ももしきの 」 から転じて内裏、皇居 )
◎ ありがたいことに、マクミランさんはこう述べています:
「 古いチェコの格言に “ 一つの言葉しか知らないものは、一つの人生しか知らない ” とあるように、日本の言葉と文化を学ぶことで、私は第二の人生と心を与えられたのである 」
そして、 「 私の知る限り、皇室や王室が詩作の伝統を支援している国は、世界でも日本だけである。それも精神的支援にとどまらず、自ら和歌を詠むという実践にまで及んでいる。 天皇家が詠まれた歌には優れたものが多い。最近の世界の王族の多くは、車や競馬、その他、過去の贅沢にばかり関心を向けている。その点、高い教養のある日本の天皇家は、国民が誇りにしていい文化の継承者であるといえよう 」
● 広きにわたる日本の文化の継承者である天皇家を、政治力誇示のカードとして扱う不埒な政府の要人は教養低く、友愛や日本の文化力を論じる資格が無い。そういうトップを戴く政党人、われわれ国民は恥ずかしく、そして哀れだと思っていたら先年失脚した。
年に一度の書道展に去年も出かけ、大先生との初めての記念写真に納まり、娘は教師コースに進まれたらとの推薦を受けた。娘の書いたひらがなの百人一首を見て、まだ固さの残るものの美しい字を書く日本人を誇らしく思い、続けたらと勧めた。英文科出身の書道家なんて素敵じゃないか。
「 One Hundred Poems、One Poem Each 」
本との出会いに感謝 !
「 One Hundred Poems, One Poem Each. 」
● ドナルド・キーン博士が絶賛する、ピーター・マクミランの 「 小倉百人一首 」 を書評で知った。なにやらの興味と、歌留多でうろ覚えの三十一文字の読解に挑戦しようと思った。
『 君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ 』 光孝天皇
For you,
I went out to the fields
to pick the first spring greens
all the while on my sleeves
a light snow falling.
「 これは、今までのところ、もっとも卓越した名訳である 」− ドナルド・キーン
● 私(増澤)、理系の頭では、上記の歌ぐらいの解釈がせいぜいで、古典(文語体)の読みくだしが出来ないもどかしさ・・・。もっとも、英語力が堪能で感性豊かであれば、そちらから理解し問題が無いのだが、英語の方はもっとあやしい情けなさ。
恥を忍んで女房に解説文(漫画イラスト入り)の本を借り六十路の貧脳の虎の巻とした。
そこで、日本語の解説文、英訳本を別々に読んで、なるほどと納得・感動が重複したものを自分勝手に取り上げることにしてみた。
◎ 四: 山辺赤人
『 田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ 』
Sailing out on the white crests ( crest:波頭 )
of the Bay of Tago, I look up
There before me
even more dazzling− ( dazzling:目もくらむほどの )
snow still falling ( still:静かに )
on Fuji crowned in white
○ 田子の浦に出でてはるか彼方を眺めて見ると、真白な富士山の高い嶺に雪が降り続いていることよ。
◎ 九: 小野小町
『 花の色は 移りにけりな いたづらに わが見世にふる ながめせし間に 』
A life in vain. ( vain: むなしい )
My looks, talents faded ( talent: 才能、fade:褪せること )
like these cherry blossoms
paling in the endless rains ( paling:<色が>薄くなる )
that I gaze out upon, alone. ( gaze:何かをじっと見つめる )
○ 美しい桜の花の色はすっかり褪せてしまったよ、むなしく春の長雨が降っている間に、私の器量もすっかり衰えてしまった。むなしくこの世を過ごし、物思いにふけっている間に。
◎ 四十: 平兼盛
『 忍ぶれど 色に出でにけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで 』
Though I try to keep it secret,
my deep love
shows in the blush on my face. ( blush:赤面する )
Others keep asking me
-----Who are you thinking of ?
○ 人に知られまいと心に秘めてきたが、私の恋心はとうとう顔色に出てしまったよ。「 なにか物思いをしているの 」 と人が尋ねるほどに。
◎ 六十一: 伊勢大輔 ( いせの・たいふ )
『 いにしえの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな 』
The eightfold cherry blossoms ( eightfold:八重の )
from Nara’s ancient capital
bloom afresh today
in the new palace of Kyoto
with its nine splendid gates ! ( splendid:華麗な )
○ その昔、華やかに栄えていた奈良の都で咲いた八重桜が、今日はこの九重の宮中で、色美しく咲ほこっている。
◎ 百: 順徳院
『 ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり 』
Memory ferns sprout in the eaves
of the old forsaken palace.
But however much I long for them,
they never will come back−
the days of old.
( memory:~を回想してしまう、ferns sprout: シダの芽、eaves:軒、forsaken:見捨てられた
Palace:宮殿、but however much:どんなに、long:思いこがれようとも )
○ 宮中の古く荒れ果てた軒の端に生えている忍び草を見るにつけても、いくら偲んでも偲びつくせないほど、恋しく懐かしい昔の御世であろうか。
( ももしき: 宮中の意、枕詞 「 ももしきの 」 から転じて内裏、皇居 )
◎ ありがたいことに、マクミランさんはこう述べています:
「 古いチェコの格言に “ 一つの言葉しか知らないものは、一つの人生しか知らない ” とあるように、日本の言葉と文化を学ぶことで、私は第二の人生と心を与えられたのである 」
そして、 「 私の知る限り、皇室や王室が詩作の伝統を支援している国は、世界でも日本だけである。それも精神的支援にとどまらず、自ら和歌を詠むという実践にまで及んでいる。 天皇家が詠まれた歌には優れたものが多い。最近の世界の王族の多くは、車や競馬、その他、過去の贅沢にばかり関心を向けている。その点、高い教養のある日本の天皇家は、国民が誇りにしていい文化の継承者であるといえよう 」
● 広きにわたる日本の文化の継承者である天皇家を、政治力誇示のカードとして扱う不埒な政府の要人は教養低く、友愛や日本の文化力を論じる資格が無い。そういうトップを戴く政党人、われわれ国民は恥ずかしく、そして哀れだと思っていたら先年失脚した。
年に一度の書道展に去年も出かけ、大先生との初めての記念写真に納まり、娘は教師コースに進まれたらとの推薦を受けた。娘の書いたひらがなの百人一首を見て、まだ固さの残るものの美しい字を書く日本人を誇らしく思い、続けたらと勧めた。英文科出身の書道家なんて素敵じゃないか。
「 One Hundred Poems、One Poem Each 」
本との出会いに感謝 !
Posted by masuzawa05 at 08:59│Comments(0)