2010年12月06日
福山市鞆の浦に三つ目の宿
「 遠音・近音 」
● 鞆の浦の港と建物の外観二面です
“ 游 ” 空間 そんな ‘ まち ’ を旅する
古くから瀬戸内で潮待ち港として知られた広島県福山市鞆の浦、旧・對山館が改築新装して、 現代の 『 和宿 』 として蘇りました。丁度オープンから1ヶ月が経ちました。恙無く営業されているようです。
『 汀邸 遠音・近音 ( みぎわ邸 ヲチ・コチ ) 』 と申します。
● 館名の由来である書画が古い木造の建物の中から見つかりました
四月(ハル)を 仙酔島(シマ)どまり 雨戸(ト)も 閉(ク)らず
発動船(ポッポ)す 遠音近音(ヲチ・コチ)― 帆聲
「 春先、仙酔島に泊まった。雨戸も閉めずにいると、小船の往ったり来たりする音が遥かに聞こえてくる 」 とでも申しましょうか。
ここは地元出身の作家、故・井伏鱒二さんがかつて釣り宿として利用し、小説の中にも登場する波打ち際の景勝の宿・・・・江戸時代、朝鮮通信使の一行の宿泊所にもなった 『 対潮楼 』 と呼ばれる建物の海側に在り、彼らをして 「 日東第一形勝 」 と言わしめた景色そのままに、見晴るかす沖合には 宮城道雄作 筝曲 「 春の海 」のモデルである、キラキラと光り輝く瀬戸内には、坂本龍馬の 「 いろは丸 」 が眠っている。
元々は江戸時代に開業し、十返舎一九やシーボルトに愛された 「 籠藤 」 から始まる由緒有る宿。昔からの路地に面し、埋もれた様に佇む古い木造玄関棟をセットバック曳き家、最小限の補強と路地に面した小庭を配して玄関とし、客室・パブリックのある本館棟とは内庭とつたいで結び、懐かしく美しい宿に仕立てました。
・・・そう、歴史が綾なす盛り沢山な地域に シンプルなお宿の誕生です。
○ 対潮楼の建物です、日東第一形勝 ( 形勝:景勝の地に城とかを築く、の意 )
時代を紡ぎ、今につなぐ手立てとしての保存再生、改装のお話が有ったときから是非やりたいと思った仕事でした。
お泊りいただくのがなによりですが、先ずはさわりをご覧あれ。
○ 玄関棟と客室棟を繋ぐつたいと中庭の佇まいです。
○ ロビー、ダイニング、客室です
○ 鞆の浦の町なみです
● 鞆の町をそぞろ歩き、昔に思いを馳せ、私(増澤)、松岡正剛さんの著作を思い出していました。
『 遊行(ゆ・ぎょう) 』 考
出かけることは遊び、楽しむことである。
旅をすることである。
水に遊ぶことである ( 海・露天風呂・波間・風 )。
一歩踏み出すことである。
鞆の浦という歴史に紡ぎ込まれた露地をつなぐ界隈性。まぎれ込んだ露地のとどのつまりの “ 游 ” 空間 ・・・・・『 汀邸 遠音・近音 』
内と外をつなぎ、閉じつつ開き、瀬戸内に放たれる、聖(ハレ)と俗(ケ)のリズム感を伴った室礼 ( しつらい ) にみる、 「 仕切り 」 という多くの気配を発する路地空間が古代から連綿と続く、鞆の 「 宿り 」 の感性であろう。
私(増澤)、いつしか白川静さんの世界にも紛れ込んでいました。
● 界隈性の概念:
鞆の浦~露地~門~玄関~つたい~游の空間(遠音・近音)~海~日本~世界~宇宙(そら)・・・・・界隈性、軒先には神が宿る。
たまに、何をお思いなさったか、いにしえの神々がにぎやかな灯りにつられ、露地に降り立ちそぞろ歩き。
● 昔人の想いは、なぜこんなにも切なく優しいのだろう。
紀元700年頃、大伴旅人の鞆の浦を詠ったもう一つの歌が近くのむろの木歌碑に刻まれています。
◎ ここで美しい料理のあれこれをご覧いただきたい。
○ 前菜
○ お吸い物 (霙仕立て)
○ 御造り
○ 焼き物 (尺八かます焼き)
○ 肉料理
○ 温物 (鯛しゃぶ峰岡風)
○ 食事 (鯛きのこ釜飯)
○ 水菓子
● 京風懐石で品が良く美味しいのだが、歴史が息づく潮待ちの港町を感じられるここらしい想い出のものが一品欲しい。
そう・・・・・気さくなやつ、 たとえば 磯の貝や雑魚で出汁を摂った “ 漁師風 ” ブイヤベースとかが紅い塗り椀に小奇麗に盛られると、映えると思った。 『 遠音・近音 風 』 でいい。
● いろいろの宿が有っていい:
我々は数奇屋建築に拘るあまり地域性に疎くなったように思います。ゴージャスで美しく、使いやすいホテルナイズされた旅館ではなくて、自然を取り込んで多少の不便さが味になるような・・・・・と。
もっとアジア発世界に向けた普遍的で心に響く地域性が薫るものが有っていい、宿は数奇屋建築と言うよりも “ 好き屋 ” 建築でもいいのかなと最近思い始めています。
旅の道づれ、いにしえの露地に迷い込んでみてはいかがでしょうか。 日本は美しい!
● 鞆の浦の港と建物の外観二面です
“ 游 ” 空間 そんな ‘ まち ’ を旅する
古くから瀬戸内で潮待ち港として知られた広島県福山市鞆の浦、旧・對山館が改築新装して、 現代の 『 和宿 』 として蘇りました。丁度オープンから1ヶ月が経ちました。恙無く営業されているようです。
『 汀邸 遠音・近音 ( みぎわ邸 ヲチ・コチ ) 』 と申します。
● 館名の由来である書画が古い木造の建物の中から見つかりました
四月(ハル)を 仙酔島(シマ)どまり 雨戸(ト)も 閉(ク)らず
発動船(ポッポ)す 遠音近音(ヲチ・コチ)― 帆聲
「 春先、仙酔島に泊まった。雨戸も閉めずにいると、小船の往ったり来たりする音が遥かに聞こえてくる 」 とでも申しましょうか。
ここは地元出身の作家、故・井伏鱒二さんがかつて釣り宿として利用し、小説の中にも登場する波打ち際の景勝の宿・・・・江戸時代、朝鮮通信使の一行の宿泊所にもなった 『 対潮楼 』 と呼ばれる建物の海側に在り、彼らをして 「 日東第一形勝 」 と言わしめた景色そのままに、見晴るかす沖合には 宮城道雄作 筝曲 「 春の海 」のモデルである、キラキラと光り輝く瀬戸内には、坂本龍馬の 「 いろは丸 」 が眠っている。
元々は江戸時代に開業し、十返舎一九やシーボルトに愛された 「 籠藤 」 から始まる由緒有る宿。昔からの路地に面し、埋もれた様に佇む古い木造玄関棟をセットバック曳き家、最小限の補強と路地に面した小庭を配して玄関とし、客室・パブリックのある本館棟とは内庭とつたいで結び、懐かしく美しい宿に仕立てました。
・・・そう、歴史が綾なす盛り沢山な地域に シンプルなお宿の誕生です。
○ 対潮楼の建物です、日東第一形勝 ( 形勝:景勝の地に城とかを築く、の意 )
時代を紡ぎ、今につなぐ手立てとしての保存再生、改装のお話が有ったときから是非やりたいと思った仕事でした。
お泊りいただくのがなによりですが、先ずはさわりをご覧あれ。
○ 玄関棟と客室棟を繋ぐつたいと中庭の佇まいです。
○ ロビー、ダイニング、客室です
○ 鞆の浦の町なみです
● 鞆の町をそぞろ歩き、昔に思いを馳せ、私(増澤)、松岡正剛さんの著作を思い出していました。
『 遊行(ゆ・ぎょう) 』 考
出かけることは遊び、楽しむことである。
旅をすることである。
水に遊ぶことである ( 海・露天風呂・波間・風 )。
一歩踏み出すことである。
鞆の浦という歴史に紡ぎ込まれた露地をつなぐ界隈性。まぎれ込んだ露地のとどのつまりの “ 游 ” 空間 ・・・・・『 汀邸 遠音・近音 』
内と外をつなぎ、閉じつつ開き、瀬戸内に放たれる、聖(ハレ)と俗(ケ)のリズム感を伴った室礼 ( しつらい ) にみる、 「 仕切り 」 という多くの気配を発する路地空間が古代から連綿と続く、鞆の 「 宿り 」 の感性であろう。
私(増澤)、いつしか白川静さんの世界にも紛れ込んでいました。
● 界隈性の概念:
鞆の浦~露地~門~玄関~つたい~游の空間(遠音・近音)~海~日本~世界~宇宙(そら)・・・・・界隈性、軒先には神が宿る。
たまに、何をお思いなさったか、いにしえの神々がにぎやかな灯りにつられ、露地に降り立ちそぞろ歩き。
● 昔人の想いは、なぜこんなにも切なく優しいのだろう。
紀元700年頃、大伴旅人の鞆の浦を詠ったもう一つの歌が近くのむろの木歌碑に刻まれています。
◎ ここで美しい料理のあれこれをご覧いただきたい。
○ 前菜
○ お吸い物 (霙仕立て)
○ 御造り
○ 焼き物 (尺八かます焼き)
○ 肉料理
○ 温物 (鯛しゃぶ峰岡風)
○ 食事 (鯛きのこ釜飯)
○ 水菓子
● 京風懐石で品が良く美味しいのだが、歴史が息づく潮待ちの港町を感じられるここらしい想い出のものが一品欲しい。
そう・・・・・気さくなやつ、 たとえば 磯の貝や雑魚で出汁を摂った “ 漁師風 ” ブイヤベースとかが紅い塗り椀に小奇麗に盛られると、映えると思った。 『 遠音・近音 風 』 でいい。
● いろいろの宿が有っていい:
我々は数奇屋建築に拘るあまり地域性に疎くなったように思います。ゴージャスで美しく、使いやすいホテルナイズされた旅館ではなくて、自然を取り込んで多少の不便さが味になるような・・・・・と。
もっとアジア発世界に向けた普遍的で心に響く地域性が薫るものが有っていい、宿は数奇屋建築と言うよりも “ 好き屋 ” 建築でもいいのかなと最近思い始めています。
旅の道づれ、いにしえの露地に迷い込んでみてはいかがでしょうか。 日本は美しい!
Posted by masuzawa05 at 11:25│Comments(0)