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増澤信一郎の心模様

2010年05月31日

デザイン論・その2( 妹島和世、西沢立衛 )

    
 建築界のノーベル賞

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 日本の建築家としては4人目、妹島和世(せじまかずよ、53才)さんと西沢立衛(にしざわりゅうえ、44才)さんに、建築家にとって最高の栄誉であるプリツカー賞が、彼らの仕事における 『 才能、先見性、献身 』 に対して送られた。建築仲間として喜ぶとともに、彼らの作品に見られる信念のようなものを感じ、私が思っていた作品に対する疑問点が雲散霧消した。建築設計界に於ける若い新しい力の台頭を思わざるを得ない。

 

◎ 新聞の賞賛記事より:

 形がよいイスを見ると、座ってみたくなる。立派な万年筆を手にすると、何か書いてみたくなる。太鼓とバチが置いてあれば、ドンドコたたいてみたくなる。言葉で指示されたわけではないのに、自然にそうしたいと感じることがある。
 
 モノの色や手触り。音や香り・・・。私たちが暮らす世界には、モノが人間に特定の行動を促す秘密の信号が満ちている。認知心理学で 「 アフォーダンス 」 と呼ばれる概念だ。この力が強い工業製品ほど、デザインが優れているとされる。力の差が最もはっきり表れるのが、ビルや住宅などの建築設計の分野だろう


 ● My辞書より: 認知心理学 ( cognitive psychology  カネティブ・サイカラディー ) は知覚・記憶・思考など、ものごとを知る認識過程を研究対象とする心理学の一分野である。
アフォーダンス ( affordance ) とは、環境が動物に対して与える 「 意味 」 のことであり、環境に実在する動物 ( 有機体 ) がその生活する環境を探索することによって獲得することが出来る意味・価値であると定義されている。
デザインのアフォーダンスは物をどう取り扱ったらよいかについての強い手がかりを示してくれる。例えば、ドアノブがなく平らな金属片が着いたドアは、その金属片を押せば良いことを示している。逆に引き手のついたタンスは、引けばよいことを示している。


○ 続いて紙面ではこう述べています:
二人が選ばれた代表作の一つ金沢21世紀美術館は、外壁にガラスを多用している。風景や空気が、建物を通り抜けていくようで清々しい。平板でそっけない印象もあるが、周りの環境に溶け込んで、人々の足が自然に動き出す。
 妹島さんたちの仕事場は、模型が山になっている。自分が楽しく使えるのはどんな建物か。使いたくなるのはどんな空間か。あれこれ試しながら、模型を作っては壊すそうだ。人を動かす力をモノに宿す奥義は、作り手自身の身体感覚であるらしい。久々の日本人の建築賞の受賞に、デザインの原点が映る。



 ● 私(増澤)思いますに、外に対してはそれぞれの用途に応じ、外部と上手に取り合い、溶け合った建築のありようが求められ、内に対しては人工的建築空間の中で、動物としての人間がいかに生き生きと振舞えるのかが問われる。

受賞理由の三つ目の言葉 『 献身 』 とは、建物を利用する人に対するさまざまな検証を通しての、優しく思いやりに満ちた実作姿勢だと理解したのだが、いかがなものでしょうか。


我が生業に戻って、RYOKAN ( 旅館 ) 創りにおける “ 佇まい・設え ” にみる、人を動かす力を空間に宿す奥義は、自身の身体感覚を磨くしかないと気づく。

たしかにその方が素直で、やがてそれがオリジナルとなる。



 ● つづいてMy辞書より:

 ○ 松岡正剛さんは千夜千冊の中の第1079夜・ 「 知覚と行為の協応関係 」 で佐々木正人さんの 『 アフォーダンス 』 を取り上げている。

 ここに一枚の紙がある。この紙をつまむのには紙の方に手を伸ばして、親指と人差し指をちょっと細める。そして摘む。その紙を折ったり引きちぎったりするには両手が必要だ。片手を前に引き、片手を外へ出す。その紙が不要な紙ならくしゃくしゃ丸めて捨てる。
 紙はわれわれに何かを与えているのである。イメージをもたらしているだけではない。われわれに動作を促しているのだ。その何かを与えているということを 『 アフォード 』 ( afford ) という。「 〜ができる 」 「 〜を与える 」 という意味だ。紙はわれわれにさまざまなアフォードをしているわけである。われわれが何をしなくとも紙はいろいろなアフォードの可能性を持っている。
 そのようなアフォードの可能性がいろいろあることを、この紙には 『 アフォーダンス 』 ( affordance ) があるという。そういう用語で、対象がもつアフォードの可能性をよぼうと決めたのはジェームス・ギブソンである。
 マイクにはそれを握らせるというアフォーダンスがある。椅子にもアフォーダンスがある。座ることを要請している。橋には渡ることのアフォーダンスや重量に耐えるというアフォーダンスがある。万年筆は持たれて紙と出会うことを、電気カミソリは顎に当てられることを待っている。アフォーダンスはいろいろなものにひそんでいる。冷蔵庫の把手から砂山の砂まで、書物から五線譜まで。
 道具だけがアフォーダンスをもっているのではない。大地は歩くことの、断崖は落ちることのアフォーダンスを、それぞれもっている。ありとあらゆるものにアフォーダンスがあるといっていいだろう。


● 行動を起こさせる何か、自ずと何かを感じたり、したくなる空間の暗示・・・理屈ではなく自然な心と体の動きを呼び覚ますもの、仕組み・・・・・。

私(増澤)、そんな空間を創らなければと思い至る。 ( 近近の産経新聞に、二人の作品評として、 『 やさしげな中に隠されたしたたかな思想を感ずる 』 とありました。 )。

したたかさとは修練のうえの身体感覚であろう。それがやがて創作思想となる。


 ● 彼らの最新作 ( 2010年5月10日 )を見てきました。愛知県豊田市に出来た生涯学習センターです。巨大マンタか、UFOの様だ。未だ使われていませんでしたが、軽快でなかなかいい。
然しながら、雨が多く高温多湿な日本でガラス面のメンテナンスと金物の錆びがうまくいくのかな?との疑問点が残る。まして鳥たちには透明さが脅威だろう。
あたりに古い町並みが迫っているわけではなく、田園が広がっているので透明な建物は違和感が無かった。そして、もう一歩踏み込んで、古い町並みの中にガラス張りのシースルー空間をマッチさせたら、それはそれでドラマチックに違いない。そんな物件にもチャレンジして欲しい。

近いうちに評価の高い金沢の美術館を見て来たい。

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Posted by masuzawa05 at 21:03Comments(0)
心を形に表す
建築空間にはいろいろの「想い」がある。
具体的な平面から容積のある空間へと立ち上げるさまざまな作業の中で、オーナーの使い勝手や心情が、私の心を通して色づいていく。
思い入れ豊かに熟成された建築空間には、オリジナルでしなやかな空気が息づき始める。
豊潤で美しく、時に凛々しい。
機能的であることは大切なことですが、美的な創意工夫も大切な要素です。
そう思いながら設計しています。


増澤信一郎
S22年10月11日生まれ
芝浦工業大学建築工学科卒業
静岡県伊東市宇佐美在住
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