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増澤信一郎の心模様 石井建築事務所ブログ

2009年03月30日

枝垂れ桜

 六十五歳からの隠居所として小さな家を建てるつもりで、海の見える小高い丘の蜜柑畑の一画を、今から十二年前の四十九歳のときに買った。息子の買い物を大層喜んだ父ではあったが、丁度売買契約の頃、家近くの道路を横断中車にはねられて死んだ。
 畑仕事を楽しみにしていた父の為に、畑の階段の登り口脇に高さ五メートル程の枝垂れ桜を植えた。 「 記念樹 」 という私の言葉に、訳を知った知り合いの植木屋は怪訝そうな声で応えたが、私にとっては正しく記念樹であった。

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 今まであまり土に触れずに過ごしてきた私だったが、天気の良い休日には、終日畑仕事をするのが日課になった。 春・夏・秋・冬 いろいろの野菜と戯れ、折々の花木に囲まれ、透明な冬の陽だまりに焚き火をする、静かな野良の一日はささやかな憩いのひとときである。

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 知らず知らずに色づく甘夏が青から黄緑に、そして黄色から橙色に変わり、三月から五月の収穫が終わる頃にはミツバチの羽音と共に、清々しい白い花と甘い薫りに満たされる。今年もお世話になった方々に完熟の甘夏を贈る春の歳時記。

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 夏の一日は長い、巨大になった採り忘れのきゅうりにビックリする。日盛りを避けて夕暮れに畑に行くと、南伊豆蛇石峠奥の山野草園で買い求めた夕菅が芳香を放っている。植物とは思えない肉感的な ‘ しばり ’ は物憂げな夏の夕暮れ、ほてりを癒す麻酔薬。

 やがて枯葉が舞い始める晩秋から初冬、忘れかけたような片隅の土くれから群れてスルリと剣先を伸ばす水仙たち、発地毎の体内時計を宿し、微妙にずれてストイックな甘い香りで咲きそよぐ。

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 季節が巡れども、初春の輝きは菜の花に限る。小さき蕾と花弁、春風にゆらりゆらゆら、かぐわしき甘さを引きずって、柔らかな茎と共に汁豊かに食す幸せ。

 自然の息吹に触れながら徒然なるままに日々を送る頃、吾が散人居はどんな新しい香りに包まれていることだろうか、それが楽しみだ。
  

Posted by masuzawa05 at 10:48Comments(0)

2009年03月23日

家具について・その3

 四国 香川県高松市の桜製作所 ( 米国以外で唯一のジョージ・ナカシマの家具を作る工場 ) からジョージ・ナカシマ記念館開設の知らせが届いた。

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 記念館館長で桜製作所の永見眞一会長は日経の ‘ 文化 ’ で家具デザイン米国の師として、こう述べています:

 永見眞一さんです

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ジョージ・ナカシマという木工家具デザイナーがいた。日系二世として1905年に米ワシントン州に生まれ、太平洋戦争前は日本で建築家として前川国男らと活動。そののち家具デザインに転向し、戦後は米国で原木の性質を生かした斬新なデザインのイスやテーブルなどを次々と世に問うた。

○ 節や穴もそのままに;

 例えばテーブルはウォールナットやオーク、ローズウッドなどの木をなるべくそのままの形で仕上げる。節があったり穴が開いていたりする箇所が立派なデザインの一部になる。西洋の家具デザイナーでありながら、ルーツである日本の自然に対する思想を取り入れたところが、ナカシマさんの大きな功績だった。

○ 消えゆく伝統に危機感;

 ナカシマさんは素材のかたちを生かす日本の木工に以前から関心を持ち、米国の自分の仕事でも実践に移していた。自分が愛する貴重な伝統がこのままでは失われてしまうかもしれない。何しろ当時の日本は社会全般で急速にアメリカナイズされつつあった。彼は日本人以上に危機感を持ったに違いない。・・・・・例えば無垢材のテーブルだと、一つ一つの木を細かくスケッチして、それに合わせた図面を描いてくれる。逆にイスは米国からいきなりバラバラの部材を送ってきて、組立ててみろと言う。必死になってこちらが作ったのを送ると、赤ペンキで修正箇所を示して帰ってきた。まるで答案の添削みたいだった。

○ 大量生産・消費を嫌う;

 次第に、ナカシマさんの家具の特徴は構造の面白さとバランスにあると気がついた。

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彼の代表作の一つである 「 コノイドチェアー 」 というイスはすっきりした二本足。人が座ると座面の根元で折れてしまいそうな気がするのだが、独特な入れ子構造で足と座面と背もたれが組み込んであり、びくともしない。一方、テーブルの寸法が図面と少々違っても素材の形状を優先し、均整が取れていれば 「 まあ、いいですよ 」 とおおらかなものだった。

 「 木が語るのを聞いてください 」 今でも耳に残る彼のことばだ。


◎ 家具について;

 スケールはちがっても家具は建築である。 「 デザインとは空気と空間と形を同じように考えることだ 」 と述べています。



● 私(増澤)、
 ニューヨークのメトロポリタン美術館の一画に彼のイス・テーブルのセットが有って、それだけで 空間に 「 日本 」 を感じるのでした。
 ジョージ・ナカシマさんのものづくりに対する熱情が永見会長さんに綿々と伝えられ息づいているのがなによりも好きだ。そんな思いが記念館を作らせたのでしょう。

 数年前に四国の工場に伺ったとき、会長が纏っていた作業着が素晴らしかったので調べていただき同じものを事務所の皆で着ています。人生経験の浅い我々には彼ほど似合ってはいないのだが、良い思い出である。( 紺と赤、二種類有って、これは赤の方です )

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Posted by masuzawa05 at 10:36Comments(0)

2009年03月16日

大根


     

 先週に続き畑のことをば 少々・・・・・。

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 * ( ちなみに大根の根と実の境は? 下から細かい根がランダムに生えていて、それが途切れてから上が実です。また甘い部分、辛い部分の区分は根の先端は辛いです。それから素朴な疑問ですが 大根にとって、根以外の部分は 実 と書くのか 身 と書くのか? 私、身のような気がしますが皆さん如何でしょうか。ついつい大根のイラストにも 『 身 』 と書いてしまいました )。


○ 日経・春秋より:

 「 畑のダイコンが動いているのを知っていますか 」
ギョッとしていると、その生産者は楽しそうに話してくれた。「 種を植えてから収穫まで毎日少しずつ、動いているんですよ。畑から出てあちこち歩くわけではないですけど 」と笑わせる。

 日の出から日没まで時計回りにダイコンは根も葉っぱも動く。 「 私、印をつけて見てたんです 」。 ネジのように回りながら土に入っていく。だから抜く時は西から東に回すようにすると楽に抜ける。 「 ニンジンもタンポポもみんな満遍なくお日様が当たるように生きているんです 」。 この話を聞いて嬉しくなった。

 男性向け雑誌のブルータスが 「 みんなで農業 」 という特集を組んでいる。
アートディレクターの佐藤可士和さんが家族や仲間と貸農園で野菜を作り、土に触れて農業にはまっていく。
 小さな種が成長していく姿に 「 生命ってスゴイな 」 と思う。そして農業自体のクリエーティブさに目覚め将来性を感じ取る。

 アウトドアー雑誌のビーパルでも 「 家庭菜園で野菜作り 」 を連載中だ。土は人を癒す。 “ 農 ” はトレンドとなれるか。 「 五風十雨 」 という。五日に一度穏やかな風が吹き、十日に一度適度な雨が降る。この農作に恵まれた風土から農業離れがやまない。国内三千ヵ所といわれる小さな市民農園がにぎわっているのに。 と結んでいます。


● 私(増澤)、十数年野菜作りをやっていて、ダイコンスクリューの件は知らなんだ!でも分かる気がする。時おり折れるんです。今度は西から東に逆時計回りに抜いてみよう。
              
野菜は動けない分だけ論理的でしたたかで、動物よりも巧みだ。        
『 農 』 は奥が深い。



 冬大根が終わり、春・夏野菜の植込みを待つ MY・畑です。

    
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Posted by masuzawa05 at 09:57Comments(0)

2009年03月09日

企業人も田舎暮らしを

 五感刺激し、モノから発想

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○ サラリーマンは田舎暮らしと都会での会社勤めを交互にする、参勤交代をせよと提言していますね:
「 自然に触れると、眠っていた感覚が働くようになります。田んぼに入れば足が沈む。石ころ道では注意しないとつまずく。舗装された道ばかり歩いていると、感覚が怠けます。あこがれて実際に住んでみたら、田舎暮らしは嫌だと気が変わるかもしれない。それでもいいんですよ 」
「 しかし参勤交代をいくら言っても一向にやらない。いっそのこと公務員やサラリーマンを事務や管理的な仕事から引き抜いて、農業や水産業をやらせたらいい。最低生活を保障して歩合で報酬を出したら、若い人は結構やりたがるのではないですか 」

○ 情報化社会はますます進み、仮想現実の世界が拡大する一方にあって:

 「 あふれる情報に振り回されずに、現実のモノを中心に考えて行動しなさいと言いたいですね。田舎住まいはその一つのきっかけです 」
 「 価値観がこちこちに固まって煮詰まってきたら、五感を刺激するモノから発想することですよ 」   ― 以上、日経の領空侵犯より。



● 小さくコチコチに固まって、煮詰まった私(増澤)の頭を解きほごす意味で、休日はなるべく畑に出ます。野菜やミカンを採ったり、花を愛でたり、木の枝を切ったり、焚き火をしたり、残り火で焼き芋を作ったり。


 蜜柑の花(甘夏、ニューサマー、黄金柑、清美、デコポン)、桜、梅、侘び助、白木蓮、花桃、山法師、花海棠、ハマボウ(別称:イエローハイビスカス)、百日紅、もっこう薔薇、萩、山吹、蝋梅、水仙、菜の花、紫陽花、夕菅、女郎花、吾亦紅、秋明菊、翁草、地生えの浦島草・彼岸花、栗・梨・柿・夏目・柚子・檸檬、 狭い畑に沢山植えたので、家内からは貧乏人の畑だねと言われています ( 少し減らさないと鬱蒼としすぎる )。
       
四季折々の香りに包まれて過ごすひと時は何よりの息抜きです。

                                 
ところで洋食の付け合せに出る、野菜の ‘ チコリ ’、 チコリは芽が出て生るものだと思って植えたところ、一向に生らず、茎がぐんぐん伸びて紫色のアザミのようなきれいな花が咲き、ビックリ! したことがあります。本で調べたら芽を土に埋め、その芽を掘り出して食べるとありました。後の祭りでした。
                                                       
出来上がったモノはあくまでも結果で、そればかり見ていると何も判らない。育てる過程での驚き・発見も、また、格別です。


● 海の見える小高い丘の MY・畑 からみた伊豆の海です。

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遠くの海にポツッと黒い小さな島が手石島で、以前の伊東沖地震で海底水蒸気爆発がすぐ先でありました。その後ろに薄く鯨のような影がみえるのが東京都下伊豆大島です。


● 春を待ちきれずに顔を出した グリーンアスパラです。

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Posted by masuzawa05 at 13:06Comments(0)

2009年03月02日

詩人の感性に学ぶ・その10

     

 日本の名詩、 英語でおどる

かつて、加島祥三さんは 『 老子 』 を英訳するとタオの思想がわかりやすい、と述べていました。今回はアメリカ人の日本詩の英訳本からです。

149アーサービナード









 
○ 旅上 (On the Way)― 萩原朔太郎

フランスへ行きたしと思へども    France is where I’d like to go,
ふらんすはあまりにも遠し but France is so far away…..
せめては新しき背広をきて Maybe I could just get a new suit
きままなる旅にいでてみん。      and travel to wherever my feet  
汽車が山道をゆくとき      and the train will take me .
みづいろの窓によりかかりて As we chug up a mountain pass,
われひとりうれしきことをおもはむ I lean against the sky blue window
五月の朝のしののめ following my own carefree thoughts
うら若草のもえいづる心まかせに。 −dewy shoots of grass unfurling on a May morning

Chug up :蒸気機関車がポッポッと音を立てる
Lean :よりかかる
dewy :露にぬれた
unfurling:広がり


○ 雲 (Cloud)― 山村暮鳥

おうい雲よ Hey Cloud !
ゆうゆうと You’re looking awfully Leisurely up there,
馬鹿にのんきさうぢゃないか laid-back.
どこまでゆくんだ How far are you headed ?
ずつと磐城平の方までゆくんか Cruising all the way to the Iwaki Plain ?

awfully :やけに
leisurely :ゆったりと
laid-back:気楽な態度
head :まっすぐ進む

●訳者注記:40歳でこの世を去った暮鳥が、死の直前にまとめた詩集 『 雲 』 は、なんとも温かくて伸びやかだ。「 馬鹿にのんきさうぢゃないか 」 というセリフは、書いた本人にも当てはまるものとして、愉快にこだまする。


○ 顔 (Faces)―茨木のり子    

電車のなかで 狐そっくりの女に遭った   On the train, I came across a woman who l
なんともかとも狐である looked like a fox-Really strikingly foxlike
ある町の路地で 蛇の目をもつ少年に遭った In a little backstreet, I passed a boy who had the eyes of a snake
魚かと思うほど鰓(えら)の張った男もあり There are men with jowls so prominent you wonder if maybe they’re not gills
鶫(つぐみ)の眼をした老女もいて and some elderly women have eyes that resemble birds, such as the Dusky Thrush
猿類などは ざらである Simian features are too common to count
一人一人の顔は Having roamed across vast distances,
遠い遠い旅路の from the remotest of ages ,each of our
気の遠くなるような遥かな道のりの peculiar faces is a brief blossoming
その果ての一瞬の開花なのだ at the tip of an astounding tour

あなたの顔は朝鮮系だ 先祖は朝鮮だな People say to me, your features are Korean.
と言われたことがある I’ll bet that’s where your ancestors were from.
目をつむると見たこともない朝鮮の     I close my eyes and see a place I’ve never
澄みきった秋の空             been, Korea,bright under an autumn sky        
つきぬける蒼さがひろがってくる whose blue stretches clear beyond my
たぶん そうでしょう と私は答える ‘I imagine you’re right ,’ I reply.

まじまじと見入り             Once, after along, hard stare at my face
あなたの先祖はパミール高原から来たんだ a man declared, ‘You ancestors came
断定的に言われたことがある from the Pamirs, for sure’.
目を瞠ると I closed my eyes and there
行ったこともないパミール高原の牧草が  in Pamir, where I’ve also never been,
匂いたち fragrant alpine grasses wafted….
たぶん そうでしょう と私は答えた ‘Yes, I imagine you’re right,’ I replied.

jowls so prominent :あごの骨の突き出した
gills :えら(鰓)
resemble birds :鳥のように見える
dusky thrush :沈んだツグミ
simian feature :猿の顔立ち
roamed across :歩き回る
remotest of ages :最も遠い旅路
peculiar faces :特殊な顔立ち
brief blossoming :つかのまの開花
astounding tour :ビックリするような旅

● 訳者注記:「世界の人口よりも、人の顔の方がずっと多いい。どの人も複数の顔を持っているから」
 人間のDNAとチンパンジーを比べれば99%以上が共通していて、600万年前までは、同一種だったらしい。さらに100万年ほどさかのぼると、ゴリラもぼくらと一緒の生き物だったとか。ちなみに人間とネズミとでは、六割方のDNAがきれいに重なっている。
  人種差別なんて 愚の骨頂だ。


○ 水のこころ (Water Ways)―高田敏子

水は つかめません      You can’t snatch water
水は すくうのです Water needs to be scooped
指をぴったりつけて by fingers held together
そおっと 大切に― in close accord, uplifting with care.

水は つかめません You can’t snatch water
水は つつむのです Water needs to be enfolded
二つの手の中に by two palms cupped together
そおっと 大切に― in close accord, uplifting with care.

水のこころ も Water is that way, and so
人のこころ も is a person’s heart.

● 訳者注記:「こころ」をなんと訳していいか、のっけから迷ってちっとも進まない。heart にするか feeling にするか、それとも sentiment がいいのか、いや mind、soul という手もある・・・。

てこずったまま、羽田空港行きのモノレールに乗って、車窓から運河を眺めていたら閃いた。「水路」のことを英語で waterway というが、その way こそが 「流儀」 「方向」というか 「ありよう」 で、つまり 「こころ」 なのではないか。         以上 アーサービナードさんの本より。



私(増澤)、イメージを形に表すとき、迷います。どう表していいかと? かつてフランク・シナトラに 「 MY WAY 」 という歌があったのを思い出しています。‘ 生き方 ’と訳すのでしょう。

わからない英単語が多くて困りますが、なるほどと思うことも多々あります、英語に置き換えて日本語を考えるのもいいのかなと・・・・でも歳のせいかすぐ忘れます。
        
日本人は相手に贈りものをあげるとき
「つまらないものですが、これどうぞ」 と言います。謙譲の美徳というのでしょうが、そのまま訳したら大変なことになります。英語では 「 I hope you like it  」。 (直訳すると:貴方がそれを好きになることを望む) と言います。

でも、
粋 だとか 侘び 寂び とかは やはりむずかしいけれど、人の脳や行動パターン、感性なんて似たようなもの。ケースバイケース、逆輸入も可、意外な英語がピッタシだったりして・・・・・・。


だから、デザインも的を外さないように気をつけなければ。
  
Posted by masuzawa05 at 10:01Comments(1)
心を形に表す
建築空間にはいろいろの「想い」がある。
具体的な平面から容積のある空間へと立ち上げるさまざまな作業の中で、オーナーの使い勝手や心情が、私の心を通して色づいていく。
思い入れ豊かに熟成された建築空間には、オリジナルでしなやかな空気が息づき始める。
豊潤で美しく、時に凛々しい。
機能的であることは大切なことですが、美的な創意工夫も大切な要素です。
そう思いながら設計しています。


増澤信一郎
S22年10月11日生まれ
芝浦工業大学建築工学科卒業
静岡県伊東市宇佐美在住
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