2007年08月27日
今どきの旅館に必要なもの・その11(施設に手を入れる)
三十数年お付き合いしている、旅館のM・社長さんと先日、年男同士こんな雑談をしました。
増澤さん、「 旅館業も廃業・倒産・民事再生・経営委譲、いろいろあって、個人企業で生き残っているのは、後5年も経つと数えるほど、なんてならなければいいけど」 etc 。
旅館の設計を生業としている私としてはさびしい限りです。しかしながら、宿泊業が無くなるわけではありません。むしろ財務的に破綻もしていないのに、土地代込み建物を丸々売ってしまうことや、後継者不足や、単なるヤル気無さによる経営放棄で、手放す方々が増えていることのほうが問題です。又、手放したくても債務が有って手放せないケースのほうが実際は多いいかもしれません。
又、割に合わないとの思いから、息子さんを医者や他業種に進ませる方々も多いいようですが、如何したものでしょうか、そんなに魅力のない商売なのでしょうか?
私の知り合いの三十代の若いご夫婦で、研修を兼ねて各地に旅をし、ホテル・旅館に泊まることも出来るし、又、いろいろ考えたことが形になり、その反応として、お客さんに喜んでいただけ、感謝されたりするから楽しい。と前向きに明るく喋ってくれる、確かな経営者がいるのも事実です。
経済紙のこんな記事が目に付きました
● 高度成長期に創業 経営者高齢化
● 銀行仲介で後継者
● 中小企業もM&A
後継者不足や少子高齢化の影響が出てきています。 中小企業向けM&A(企業合併・買収)の相談が増えているとの記事。事業継続のためのM&Aは外資ファンド対策も有って大手企業では普通の事と成ってきていますが、中小企業にも及び始めたとは。
ファンドと組んで、何軒かの経営を始めている旅館経営者の方も居ますし、大手企業も参画してきています。所有と経営を分離する欧米ホテル的な考え方もあります。先日も日経に、‘サービス業の進化・下支え’と題して、米ニューヨーク州にある名門コーネル大学でホテル経営を学んだ、日本人の方々の活躍が論じられていました。身近な旅館も例外ではありません。
それぞれの立地、ソフト面での持ち味を活かした、M&Aが有っていいと思うのだが・・・・・、人材次第でしょう。 そんなことは許せないという声も聞こえてきますが。 かつてそんなことを真剣に考えたこともありました。
旅館に限らずオーナー社長には、自分の会社を売り渡す行為そのものを 『恥』 と考える傾向が強いようです。家業として、当然といえば当然なんですが・・・・・・。
しかしながら新聞記者の目にはそう映るのでしょう。そして、大手銀行の担当者は「M&Aを成立させるには、経営者のそういう意識を変えてもらうことが課題」と結んでいる。
身内が経営する旅館の社外監査役という私の立場からは、
高齢化・後継者不足と言う二点は切実な問題です。そしてM&Aは検討に値する事柄でも
ある。 先ずは、 ‘魅力ある旅館’ にならなければ !
ここで重苦しい話はさておいて、
● 小さな改装(マメに手を入れていく)のくりかえし;
最近の増・改装例の中で特筆すべきは、オーナーが計算した堅実な財務の内容で少しずつ投資を繰り返して、何年後かにはハード・ソフト共に理想に近づけるという投資スタイルが、低成長下で定着してきた様に思われます。もちろん融資元の理解と、小さい改装工事であっても、融資効果としての、売り上げUP実績が必要なのは言うまでもありません。
増築は必要最小限にとどめておいて(但し良い大風呂が無いときには思い切って増築若しくは改造をしましょう。日本人客にとっては旅館のお風呂は大切です)、 客室やダイニング、ライブラリー等のパブリックについては改装で済む場合が多いいです。そして、決められた予算の中で、しっかり作って、良いものを永く使う。
私はそれを ‘ダイエット改装’ と呼んでいます。バブル太りした体をスリムに整え直し、時代の要求に応える施術をする。健康維持のためにも早いほうがいい。
健全さの為のメンテナンスを兼ねた掃除や飾り付けならば、お金を掛けずに、自分たちで今からでも すぐ出来ます。
長期計画を立て、改装について今年はここまで、次にしたいことは考えてあるのですがそれは2年後とか・・・・・総合的な完成は10年後。戦いやすい体を徐々に作り上げるのです。
いついかなる事態にも対処できる、というと語弊がありますが、その時の為に付加価値を付けるのです。
◎ これらは至近なZ・Kホテルさんと、Z・Sホテルさん。H・H旅館さんの大風呂の増築例です
いい温泉を持ちながら、大風呂の商品力が弱いときのカンフル剤としてのハード創りの例です。
◎ 又、以下の写真は、適正に予算付けをして、徐々に ‘いいもの’ を作りながら、施設整備をして夢を叶えるという、京都のS・K旅館さんの例です。
近頃は、上記旅館さんのように、設計概算よりも 「もう少しお金をかけて ‘時代に耐えて永く遣えるいい施設’ を作って下さい」 という要望も増え始め、そういう仕事をしました。
対費用効果としてのバランスを崩してはいけませんが、 まあ、お金をかけると言っても通常の2割UP程度なんですが・・・・・。収容規模の小さい個性派旅館に限らず 『良いものを永く慈しんで使っていく』 そういう成熟化した時代の到来を予感します。
建築工事は一度に大きなお金が動きます。
「 設計士のやりたいことの為にお金を出すのではない 」 と言われない為にも、
プロとして『 的を外さず、何をデザインしなければならないかを訴え・明らかにする 』という、一連のコンセプトメークを通じて、お客様の満足を得られるよう 心して臨みたいと思っています。
増澤さん、「 旅館業も廃業・倒産・民事再生・経営委譲、いろいろあって、個人企業で生き残っているのは、後5年も経つと数えるほど、なんてならなければいいけど」 etc 。
旅館の設計を生業としている私としてはさびしい限りです。しかしながら、宿泊業が無くなるわけではありません。むしろ財務的に破綻もしていないのに、土地代込み建物を丸々売ってしまうことや、後継者不足や、単なるヤル気無さによる経営放棄で、手放す方々が増えていることのほうが問題です。又、手放したくても債務が有って手放せないケースのほうが実際は多いいかもしれません。
又、割に合わないとの思いから、息子さんを医者や他業種に進ませる方々も多いいようですが、如何したものでしょうか、そんなに魅力のない商売なのでしょうか?
私の知り合いの三十代の若いご夫婦で、研修を兼ねて各地に旅をし、ホテル・旅館に泊まることも出来るし、又、いろいろ考えたことが形になり、その反応として、お客さんに喜んでいただけ、感謝されたりするから楽しい。と前向きに明るく喋ってくれる、確かな経営者がいるのも事実です。
経済紙のこんな記事が目に付きました
● 高度成長期に創業 経営者高齢化
● 銀行仲介で後継者
● 中小企業もM&A
後継者不足や少子高齢化の影響が出てきています。 中小企業向けM&A(企業合併・買収)の相談が増えているとの記事。事業継続のためのM&Aは外資ファンド対策も有って大手企業では普通の事と成ってきていますが、中小企業にも及び始めたとは。
ファンドと組んで、何軒かの経営を始めている旅館経営者の方も居ますし、大手企業も参画してきています。所有と経営を分離する欧米ホテル的な考え方もあります。先日も日経に、‘サービス業の進化・下支え’と題して、米ニューヨーク州にある名門コーネル大学でホテル経営を学んだ、日本人の方々の活躍が論じられていました。身近な旅館も例外ではありません。
それぞれの立地、ソフト面での持ち味を活かした、M&Aが有っていいと思うのだが・・・・・、人材次第でしょう。 そんなことは許せないという声も聞こえてきますが。 かつてそんなことを真剣に考えたこともありました。
旅館に限らずオーナー社長には、自分の会社を売り渡す行為そのものを 『恥』 と考える傾向が強いようです。家業として、当然といえば当然なんですが・・・・・・。
しかしながら新聞記者の目にはそう映るのでしょう。そして、大手銀行の担当者は「M&Aを成立させるには、経営者のそういう意識を変えてもらうことが課題」と結んでいる。
身内が経営する旅館の社外監査役という私の立場からは、
高齢化・後継者不足と言う二点は切実な問題です。そしてM&Aは検討に値する事柄でも
ある。 先ずは、 ‘魅力ある旅館’ にならなければ !
ここで重苦しい話はさておいて、
● 小さな改装(マメに手を入れていく)のくりかえし;
最近の増・改装例の中で特筆すべきは、オーナーが計算した堅実な財務の内容で少しずつ投資を繰り返して、何年後かにはハード・ソフト共に理想に近づけるという投資スタイルが、低成長下で定着してきた様に思われます。もちろん融資元の理解と、小さい改装工事であっても、融資効果としての、売り上げUP実績が必要なのは言うまでもありません。
増築は必要最小限にとどめておいて(但し良い大風呂が無いときには思い切って増築若しくは改造をしましょう。日本人客にとっては旅館のお風呂は大切です)、 客室やダイニング、ライブラリー等のパブリックについては改装で済む場合が多いいです。そして、決められた予算の中で、しっかり作って、良いものを永く使う。
私はそれを ‘ダイエット改装’ と呼んでいます。バブル太りした体をスリムに整え直し、時代の要求に応える施術をする。健康維持のためにも早いほうがいい。
健全さの為のメンテナンスを兼ねた掃除や飾り付けならば、お金を掛けずに、自分たちで今からでも すぐ出来ます。
長期計画を立て、改装について今年はここまで、次にしたいことは考えてあるのですがそれは2年後とか・・・・・総合的な完成は10年後。戦いやすい体を徐々に作り上げるのです。
いついかなる事態にも対処できる、というと語弊がありますが、その時の為に付加価値を付けるのです。
◎ これらは至近なZ・Kホテルさんと、Z・Sホテルさん。H・H旅館さんの大風呂の増築例です
いい温泉を持ちながら、大風呂の商品力が弱いときのカンフル剤としてのハード創りの例です。
◎ 又、以下の写真は、適正に予算付けをして、徐々に ‘いいもの’ を作りながら、施設整備をして夢を叶えるという、京都のS・K旅館さんの例です。
近頃は、上記旅館さんのように、設計概算よりも 「もう少しお金をかけて ‘時代に耐えて永く遣えるいい施設’ を作って下さい」 という要望も増え始め、そういう仕事をしました。
対費用効果としてのバランスを崩してはいけませんが、 まあ、お金をかけると言っても通常の2割UP程度なんですが・・・・・。収容規模の小さい個性派旅館に限らず 『良いものを永く慈しんで使っていく』 そういう成熟化した時代の到来を予感します。
建築工事は一度に大きなお金が動きます。
「 設計士のやりたいことの為にお金を出すのではない 」 と言われない為にも、
プロとして『 的を外さず、何をデザインしなければならないかを訴え・明らかにする 』という、一連のコンセプトメークを通じて、お客様の満足を得られるよう 心して臨みたいと思っています。
Posted by masuzawa05 at
13:44
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