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増澤信一郎の心模様

2007年04月23日

バリアフリー・その2

 先日、ホテルレストランショー(2007年)で国際観光施設協会主催のパネルディスカッション 『こうすれば喜ばれ、売り上げが上がるバリアフリー対策』 が開催されました。

 その講演で、「旅する視点でみた、バリアフリー旅行成功の秘訣」と題して、有限会社 ベルテンポ・トラベル・アンドコンサルタンツ代表でトラベル・コーディネーターの高萩徳宗(たかはぎ・のりとし)さんのお話が、旅館設計にたずさわる者として、特にソフト面でわかりやすく納得できたので記します。
(余談ですが、『バリアフリーの旅を創る』と言う本が実業之日本社から¥1500で出ています。 読んでみてください。)
 
高萩氏


 





 


 お金を持っている・旅をしたいと思っている障害者がそこにいるのに、受け手の宿がいろいろ出来ない理由を述べ、拒絶する必要はない! ビジネスチャンスは沢山転がっているのに! という辛口の指摘から始まり、 実体験からのお話は ‘なるほど’とうなずくことばかりでした。

● 総論

一、 車椅子、障害者であっても普通に旅をしたいんだ、という考え方を尊重すること。(エピソードとして; 添乗をしていたある真夜中、車椅子の人に電話で起こされた。トイレの介助かと思って部屋に行ってみると、「ビールを飲みたい」と言う。眠かったんで、冗談じゃないよ!と怒ると、俺たちも一般の人と同じように、夜中にビールを飲みたいときも有る。と言う・・・・・。)
二、 3つの  ‘不’  (不安・不満・不便・・・・・トイレの不安から生じる怖さや、諸々の快適さや、便利さ) にどう調査対処するか。
三、 オールラウンドな旅の手配ではなく、側面支援をしている。というスタンスが大切。(国内旅行7割、海外旅行3割)
四、 紹介したホテルサイドからリベートを貰うのではなく。お客様から手配料としてお金をいただく。(それが大切だと私・増澤も思いました。)
五、 お客様から旅を通じ「生きててよかった」と言ってもらえるのが何よりも嬉しい。


● 各論
一、 旅してわかる、バリアフリービジネスのヒント
・ サービスの軸をはっきりとさせる:                     
それぞれの施設が自分のホテルはどういう施設かをキチッと理解していることが大切である。
・ 誰に来て欲しいかを明確に(障害者というマーケットは存在しない):       
すべての障害者ではなく、誰に来て欲しいかを明確にすることが大切。
・ 出来ること出来ないことをはっきりさせる:
  経営者が従業員に受け手としての自分たちに出来ること出来ないことをはっきり教え、そのことを前提に従業員が身障者の方と交渉する。それでいい、と言うお客様を迎える。
・ 続けられないことはやらない:
  いつでも出来ることをやる。無理は長続きしない。
・ 大切なのは情より しくみ:
  気持ちがあっても、出来ないことが多々ある。だから出来る‘しくみ’をつくることが大切である。無理したしくみはサービスする側の 心・表情に 正直に出てしまい、お客様を傷つける。それはソフト面から非常にマズイ。
・ お客様から選んでもらう:
  お客様が、自分で出来ること・出来ないことを判断して、旅や宿を選ぶ。

二、 旅の成功は、情報発信とコミュニケーション
・ まずは自分のことを良く知らせる:
  ホームページにて情報収集出来るように、そういうページを作る。
・ お客様の情報を出来るだけ多くいただく:
  お客様の考え方を良く聞き、 受け手として出来る出来ないかを判断する(お客様からより多くのデーターを入手すること)
 
三、 思い込みと 過信は命取り
・ 大丈夫、は大丈夫でない:
  思い込みと・過信は禁物である。
・ お客様は、自分のことを正確に伝えられない:
  障害の程度や有り様をその人自身よく説明できないので、正確に聞き取るようにする。そして具体的なサービスにつなげる。

四、 利益を出してこその、バリアフリービジネス
・ キーワードは ファン創りとリピーター育成:
  リピーターやファンになってもらうのには『自分のところで出来るサービスの明示』をし、丁寧な打ち合わせと、心からの対応をすること。 
・ ダイレクトマーケティングが成功の秘訣:
  例えば旅館は、送客エージェント向きにものを考えるのではなく、お客様の方を向いて営業して欲しい。
・ サービスの代価としてのお金:
  良いサービスをし、満足していただくためには、それなりのお金をいただかない    
  とできないことの相互認識と、高いと感じさせないホスピタリティー。

以上、大変有意義な話でした。
 
 ディスカッションの中でこんな頓智 問答が有りました; 洋便器のウォシュレットは有るけれど和便器のウォシュレットが無いので、腰掛けることの出来ない、床を這ってでしか動けない人から開発してくれないかとの要望について、「誰か良いアイデアがないでしょうか」という主催者側からの問いかけがあり、「どなたかご存知なら教えてください」と・・・・・・。
 すると、会場に居られた車椅子の男性から、「洋便器を使って周りの床を上げればいいんだよ!」と、 一同、なるほどそうか! と納得し苦笑い、和やかな一幕。


 またデーター的に;今の日本に身障者が650万人、高齢者2000万人。トータルで人口の1/5なんです。これらの人達はなるべく混まない土・日・休日以外の旅を望み、特にハンディキャップのある人は 折角行くのだから2〜3泊はしたいと思っている。そしてサービスに見合うお金は充分に払える人たち。 だから、ホテル・旅館にとっては何よりのお客さんなんですね!  私、ブログの「バリアフリー・その1」でも述べましたが本当にビッグ・ビジネスチャンスと思うのですが如何でしょうか。


 私事ですが、旅館の設計者として今まで、バリアフリーに限らず 『なんでも設計でき、かつ完璧を目指さなければダメ!』 と思っていました。しかし、パーフェクトを目指すということは一つ条件が変わると、再度組み立て直さなければならないと言う事で、窮屈であり、お互いに厄介です。                                 
空間の輝きはハードとソフトのマッチングなんですね。ソフトが有ってのハード、施設創りにあたってはフレキシブルな組み立てが可能な ‘よりベター’ ‘いい加減’ を目指すくらいで丁度いい・・・・・と。そして、我々サイドの 得手・不得手、 出来る・出来ない という事柄を明確にしたうえで、クライアントとの打ち合わせに臨むべきだと思っています・・・・・如何でしょうか。


 ともあれ、目からうろこのバリアフリー・ビジネス論でした。
  

Posted by masuzawa05 at 10:09Comments(0)
心を形に表す
建築空間にはいろいろの「想い」がある。
具体的な平面から容積のある空間へと立ち上げるさまざまな作業の中で、オーナーの使い勝手や心情が、私の心を通して色づいていく。
思い入れ豊かに熟成された建築空間には、オリジナルでしなやかな空気が息づき始める。
豊潤で美しく、時に凛々しい。
機能的であることは大切なことですが、美的な創意工夫も大切な要素です。
そう思いながら設計しています。


増澤信一郎
S22年10月11日生まれ
芝浦工業大学建築工学科卒業
静岡県伊東市宇佐美在住
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