2005年08月29日
国際商品としてみる日本旅館の魅力 その3・建物と庭
日本旅館の情緒性を施設作りから捉えると、庭と建物との関連をどう演出するかが肝心であり、その微妙な取り合いが大切である。
内と外をつなぐ空間構成の一番大切な要素として軒先空間がある。室内から軒先をかすめ外に放たれ広がる庭があり、又庭が軒先をかすめて知らず知らずのうちに内部に入り込んでくる。遠く連なる山並みや町並みを借景として捉え、わが敷地の庭のボリュームに呼応させながらオリジナルな‘うち’だけの小宇宙を構成する。それが日本建築の美意識であり、旅館建築にはなくてはならないものである。
又建物と建物の間に出来るいくつかの地べたを中坪庭として採光・通風・緑化に利用する先人の知恵にも学ぶところが多い。そして単に建物周りを樹木でふさぐのではなく、元々有った庭の中に建物を挟み込ませてもらったと言うような謙虚な気持ちと、後先なしの庭師と建築家との共同作業が肝要かと思われる。
「庭は宇宙につながり、宇宙の神秘は軒先に宿る」